スタートアップ企業のリーダーシップ

ここ3か月ほど、米国ベンチャー企業の日本拠点における
リーダーシップ開発をお手伝いしています。

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<写真はイメージ: 実際の企業とは関係ありません (Licence Free Photo)>

とにかく急成長していて需要が倍々で増加している市場において
ユニークなテクノロジーを持つ会社です。
様々なバックグラウンドを持つ方が集まっていますが、
これだけの成長速度の中でマネジメントをするのは皆初めての経験です。
とにかく動きながら考え、時間を作り、必要なスキルを補充していくしかありません。

通常、大企業は2-3年の時間軸で中期計画を立てたりしますが、
この企業の市場は1年以内のサイクルで大きなピボットがあったりします。

一般的なマネジメント研修のセオリーを当てはめてもフィットしません。
この企業だけのためにカスタマイズした内容で、アジリティ(俊敏さ)と
リアリティを重視した形で進めています。

ディスカッションも「Googleに行きそうな優秀な人材をどうやって獲得するか」
など、リアルな課題を扱って進めてます。

Fast Moving Companyにおけるリーダーシップ開発。
来年、いくつかフォーカスしたいテーマの中の重要な部分になりそうです。

多国籍チームの研修

今週は、日系大手企業の「新規事業を考える」研修の講師をしてきました。
総勢100名超の参加者を7クラスに分けて同時進行するという大がかりな試みです。
うち5クラスは日本人のみ(日本語)、2クラスは多国籍チーム(英語)で、
多国籍チームのファシリテーションを担当してきました。

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研修で使用するフレームワークは、広く一般的なもの(Business Model Canvas)なので
知識を移転すること自体にはあまり価値はありません。
肝となるのはディスカッションのファシリテーションです。

僕のクラスは3グループあり、グループごとに、異なるビジネスモデルを検討し、発表をするのですが、
ワークの進め方に三者三様の傾向がでました。

グループA:
議論を拡散させるのが得意。壁のホワイトボードを目いっぱい使って、
最後まで議論が収束しないが、活発なやりとりとなった。
議論を触発するリーダーが存在した。

グループB:
早い段階から役割分担が進行われ(Marketingが得意な人と、数字が得意な人)、
分業が効率的に行われ、安定的に時間内に資料をまとめた。
ステークホルダーのマネジメントが上手にできていた。

グループC:
ボトムアップ式に全員が意見を出し、着実に事実ベースの数字を積み上げ
計画策定を行った。分析が上手。

事業の発展段階によって、相応しいチーミングやプロジェクトの進め方があります。
Aは創業期、アイデアジェネレーションの段階、
Bは同志を募り組織化していく段階、
Cは投資家やパートナーを説得し、資金を得る段階、
にそれぞれ強みがあると思いました。

これらのチームの議論に対し、その場対応で適切な質問とコーチングを入れて
彼らがアウトプットの質を上げるのをサポートするのがファシリテーターの役割です。
決して「知識・経験を教えてあげる」といった態度では成立しません。

とりわけ海外から参加者を招いて行う研修は、
このようなアウトプット中心の場になってきています。
知識インストール型や経験をベースにした啓蒙型の研修の時代は既に終わりました。
そして、

  • 一回では終わらない、継続的な取り組みにすること

  • 業務との関連性の高いテーマにし、職場に持って帰れるアクションをアウトプットすること

が重要です。

来年もこのようなワークショップが増加しそうです。

 

藤森さんへの質問

最近は講師やファシリテーターの立場でアウトプットする場面が多いのですが、
インプットも重要です。時間があいた時には自分も研修を受けたり、
異業種・異分野の方との交流をするようにしています。

今日は、藤森義明(元LIXIL社長)さんの講演に参加してきました。
GEでジャック・ウェルチの直下で鍛えられた体験、日本での経営における
エグゼキューションについて、実体験ベースに語っておられ、
色々なインサイトを得ることができました。

僕はこのような講演の際、必ず真っ先に手を挙げて質問するようにしています。
今回も、話が終了するや否や間髪入れず挙手したところ、藤森さんは
僕を当ててくれました。

「GE流の実力主義評価(9ボックス)で低ランクに該当した社員に対して、
日本では米国のように簡単に人員整理するわけにはいかない中、
どのように処遇していったのか?
また、平均的なミドルパフォーマーであったとしても、変革に対する抵抗が
大きかったのではないか?具体的にどんなチェンジマネジメントをしたのか?」

藤森さんの回答はこうです。
「人事をHRに任せるのではなく、事業部門のヘッドがきちんと従業員と
向き合ってコミュニケーションすること。
適切・適時なフィードバックをきめ細かくすること。
低い評価であればあるほど、上司がしっかり説明をし、改善プランを
作ること。それでダメだったとしても、むしろ従業員が退職する際には
感謝されたケースも多い。」

その他、いろいろなやり取りがありましたが、
コラムへのアップはこのくらいにしておきます。

とにかく、ここ最近出会った経営者の方の中では
存在感・パッションに圧倒されました。